お知らせ

カテゴリー別アーカイブ: 日記

Zuppa romana  ズッパロマーナ

珍しいイタリア郷土菓子image0 (15)0516
日本で食べられるレストランは数少ない、
そんな知る人ぞ知るズッパロマーナ。
先日妊婦さんがご来店くださったので、
本来ならリキュールたっぷりのズッパロマーナを
マチェドニアを使ってサッパリ仕上げました。
とても喜んでくださりました。
少し蒸し暑くなり、
ドルチェもサッパリしたもので
締めくくりたくなる季節になってきましたね
ランチは前日までのご予約制、
ディナーも予約制にて営業しております。
ご来店前にお電話ください。

奇跡のラザーニャ

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多くのご注文をいただいている、カーサベッラのラザーニャですが【奇跡のラザーニャ】という名前に至った背景を、マダム越川里枝が綴りました。ぜひご一読いただけたら幸いです。

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父が亡くなって3ヶ月が過ぎた。
コロナの外出自粛要請で毎日がドタバタ。二人の男子兄弟とほぼ自宅でずっと一緒な日々は、正直あまりゆっくり悲しみにも思い出にも浸れる時間はない。そのおかげで寂しい想いもしなくて済むわけだから、家族とは改めて有難い存在だと実感する。

私たち夫婦のレストラン、ホスタリアカーサベッラもコロナ影響で3月よりキャンセルが相次ぎ、窮地に立たされている。なんとか融資の資金繰りを経て、この緊急時に少しでも皆さんのお役に立てたらと、テイクアウトを強化しはじめている。

【究極のカルボナーラ】が代名詞のような私たちのレストランだが、カルボナーラほどテイクアウトが非現実的な料理はない。そこで何が最も皆さんのご自宅で美味しく召し上がっていただけるか考え、出た結論は【特製ラザーニャ】。

これまでもひっそりとお持ち帰りができることをメニューの中などでお知らせし、常連のお客様から不動の人気を誇るシェフの自信作。これを皆さんに食してもらえたら、少しはリラックスしたり元気を出してもらったりできるのではないか。

それには確信もあった。
なぜなら、このラザーニャはただのラザニアではないからだ。

さかのぼること、去年の暮れ。
12月17日に膀胱癌で再入院した父が、危篤になり翌18日に主治医から呼び出しを受けた。

血の気がなく個室のベッドに横たわった父。もう意識もほとんどなく喋る気力もない変わり果てた父親の姿に対面し、涙がこみあげたあの恐怖が今も鮮明に蘇る。

「もう手の施しようがありません。いつどうなってもおかしくない状況です。」

冷静に放たれた言葉が何度も頭をリフレインする。

父親とここ数年ほとんど会ってもなく、口をきいてもいなかった事実は後悔しても仕切れない。まさかこんな形で再会することになるなんて。

改めて主治医の口から知らされる病状の経過と現実に、涙は止まらない。一人でどれほど苦しみ、悲しみ、孤独だったろう。胸が引き裂かれる想いだった。

その夜はパートナーのかたが病院に泊まり込み付き添ってくださることとなり、少しばかり安堵して2人の子供の保育園のお迎えに急いだ。

こんな時だって無情にも日常は回っている。

翌日19日も朝から病院へ。「お会いしたい方がいれば早めにいらしてください」との主治医の言葉に気が動転し、山手線の方向を間違える自分。冷静になりたくてもなかなかなれない自分がいた。

ほとんど何も食べることはできないとわかっていたけれど、シェフである夫の作ったラザーニャをわらをも掴む思いで少し持参した。

病院へ着くと昨日より少しだけ血の気が戻った父が横たわっていた。意識はほとんどなく、時々ほんの一瞬会話のようなものができる。すぐに眠りにいざなわれてしまい、これが癌の急速な進行を何より表す姿だと目の前に突きつけられる。

妹も到着し、パートナーの方と3人で少し談笑していると、父も楽しそうな声につられてか、意識が一瞬戻る。その隙に「てっちゃんのラザニア持ってきたよ。食べる?」そう聞いてみた。

かすかに頷く父。

水分を少し口にしたあと、温めたラザニアの香りが食欲をそそったのか、最期くらい美味しいものをと本能が求めたのか、信じがたいことに父がラザニアを食べたのだ。

1口、2口、3口、、、確か5口ほど。もう自分では食べることができなかったので、私がスプーンですくって口に運んであげた。

それから味を確かめるように頷き、「美味しい」と小さな声でつぶやいたことが嬉し過ぎて、状況を夫に電話で即座に伝えた。

夫も涙を堪えながら喜んでくれていた。
これは、私たちにとって信じがたい奇跡だった。

その後、父はあの危篤の状況からは絶対にありえないほどの回復を束の間見せてくれた。自分で再びスプーンが持てるようになり、車椅子にも乗って病院内を少し散歩できるまでになった。立ち上がる練習もした。リハビリ病院への転院も考えて準備するほど光は一瞬差し込んだ。

まさにクリスマスからお正月にかけて起きた奇跡だった。あの日ラザニアを口にした瞬間から、細胞が少し目覚めたのかもしれない。もうちょっと生きてやろうと思い直してくれたのかもしれない。

とにかく私の人生において信じがたく忘れがたく何にも変えられない宝物のような時間であったことは間違いない。

私は【奇跡のラザーニャ】と、
このラザニアを命名した。

父は入院後なんども私に病院食の不味さを酷さをこぼしていた。実際に見てもそのビジュアルから香りから酷く不味そうで、健常者でも手にとって食べたいと思うものではなかった。

運んでくる看護師さんですら食べたいと思わないと言っていた。そんな料理とも言えないただの栄養だけを考えた食べ物の塊の皿を、病人が食べたいと思うわけがない。

結局人にとって最も大事なのは生きる糧となる食事であり、それは単に栄養を口にするということではなく、味覚による思い出や誰かが愛情もって作ってくれた想いや、一緒に食べる人との会話を体に記憶させることで、細胞を喜ばせることでなくてはいけない。

父の死をもって私は新たな課題をもらった。あの日から思わずにいられない。日本の病院食を変えたい。そう使命感に似た何かを私は背負った気がする。

レストランを営む者として、少しでも医療の現場に関わり現実を変える動きをこれから少しずつしていきたい。

きっとコロナで苦しむ患者さん医療関係の方々を元気付けるのも、食でしかないと私は密かに確信している。

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【奇跡のラザーニャ】はお陰さまで、多くのお客様にご好評いただき、連日ご注文が後を経ちません。心より感謝申し上げます。

「フェレンターノ」の生産者ダニエレ氏が来訪くださいました

究極のカルボナーラに合わせたい最高の一杯として、イタリアはウンブリア州に所在するワイナリー、ファレスコが作る「フェレンターノ」だと私たちは最近そんな結論に至っていました。

そんなタイミングでファレスコのダニエレ氏が日本にいらっしゃるとのことで、ぜひご本人も究極のカルボナーラとのアビナメントをご自身で味わいたいと、わざわざ忙しい合間を縫ってカーサベッラに来てくださいました。

ダニエレ氏はワイン造りに情熱を傾け人生を捧げるリカルド&レンツォ兄弟に共鳴し、かれこれ30年も共に歩まれてきたそうです。ご自身もワインと結婚をしたとおっしゃるほど。

イタリア料理の中でローマ料理が一番好きとおっしゃるダニエレ氏。カーサベッラのお料理に大満足のご様子で、私も嬉しい限りでした。

いざ究極のカルボナーラを召し上がると表情が一転。とても真剣な表情になり、「Perfetto!(完璧)」の一言。

そして心からの拍手をシェフの贈ってくださいました。

私もダニエレさんと同席してお食事を共にさせていただいたのですが、改めてカルボナーラとフェレンターノの相性に驚愕しました。

黄金色がカルボナーラの色と美しく重なり、フルーティーな香りと口当たりの柔らかさがカルボナーラの卵のまろやかさと相性良く口の中で溶け合う。

まさに完璧な組み合わせだと実感しました。

ダニエレさんが、とても粋なことをおっしゃいました。

「こんなにも美味しいカルボナーラは食べたことがない。イタリアの有名店よりも美味しい。確実にここのカルボナーラはイタリアにおいてもトップクラス。もしもこのカルボナーラに1つだけ足りないものがあるとすれば、それは【少しの欠陥】かな。あまりにも完璧で素晴らしいがゆえに、シェフの署名にもなるちょっとした欠陥が足りないとも言えるかもしれない」

といたずらっぽい笑みを浮かべてくださいました。

「カルボナーラに少しの欠陥」。考えさせられます。

最高に楽しく実り多い昼下がりとなりました。ウンブリアで来年お会いしましょう!

マダム 越川里枝

 

 

 

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究極のカルボナーラと合わせて頂きたいスパークリングワイン

「カルボナーラに合うワインでお願いします」とお客様からリクエストいただくことが多く、私たちも日々ペアリングを楽しんで研究しています。今日ご紹介したいのは、究極のカルボナーラに是非合わせていただきたいスパークリングワインです。

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【Ferrari Perle Millesime DOC / フェッラーリ ペルレ 2013】

シャルドネ100%。トレンティーノアルトアディジェ州のスプマンテ。9月中旬に手摘みで収穫され、20度に管理されたステンレスタンクで自社培養酵母を使用し12日間醗酵させた後、瓶内で少なくとも5年間熟成させ造られた黄金色の輝きを持つフェッラーリの逸品。

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ほのかなトーストを彷彿とさせるスパイシーな香りがカルボナーラのパンチェッタやグアンチャーレの香りと絶妙にマッチします。ドライなので食前よりも食事と一緒にお楽しみいただきたいスパークリングワインです。

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今日も目の前は工事です

新国立競技場 撮影 2019.09.10

2013年9月、東京オリンピックの開催が決まった頃、時同じくして私たち夫婦はこの場所でお店をやることを決めました。当時から今まで目の前は工事しかしていません。今日も目の前が工事です。渋谷区とは思えないほど夜は真っ暗で静か、そんな場所です。

「本物のイタリア料理で世界各国のお客様をおもてなししたい」その想いでレストランを始めました。

なんとか今年の12月でカーサベッラは5年を迎えます。果てしなく遠くに感じた2020年もいのいよ来年に迫ってきました。

オープン当初に誓った想いに恥なき挑戦をこれからも重ねてまいります。ご期待ください。

 

オーナーシェフ越川徹也

マダム 越川里枝

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Vol. 10 カルボナーラとたかはしたまご【最終回】

Vol. 10 カルボナーラとたかはしたまご 最終回

【究極のカルボナーラを求めて】

2018年7月、日本テレビnews every.の特集に出演しました。

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番組取材の依頼が来た時は内容によってはお断りする予定でした。これまでも自分のスタイルに合わない番組には出たくないと思い、いくつかお断りしてきたからです。(今思えば格好つけずに出演しておけば集客につながったかもと思うものもありますが・・・)

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しかし、番組プロデューサーの方と話をしていくうちに、夕方の単なるニュース番組と思っていたイメージが変わり、その熱心な取材姿勢と熱い想いに、これは正真正銘の報道番組だとこちらも大きな感銘を受けました。

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ヤラセは一切なし。ニュース番組なのでいつ放映できるかも決まらないので、実際に放映されるまでSNSやネット上にお知らせはNGとのことで、店内撮影時も知り合いを呼ぶなどはNGと念押しをされ、お客様のいる店内風景の撮影打ち合わせは一切なく、その時お客様がいらっしゃらなければまた別日に参りますとのことで、その本気度の高さと気合の入りように驚きました。

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特集テーマは「卵」。話をする中で、たかはしたまごの高橋さんにも会いに行き取材させてもらいたいと言っていただいた時は嬉しかったです。お陰で、たかはしたまご×カルボナーラというドキュメンタリー調の仕上がりで出演することができました。

news every.をきっかけにカーサベッラのカルボナーラはもちろんのこと、「たかはしたまご」が広く世の多くの方々に知ってもらえたことは、非常に嬉しく思いました。高橋さんに少しでも恩返しができたらと思っていたからです。

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高橋さんの卵が進化し続けているように、私のカルボナーラも日々進化し続けられるよう、これからも小さな努力の積み重ねを丁寧に続け、お客様とカルボナーラと真剣に向き合い続けていこうと、この番組出演で改めて胸に誓いました。

私の“究極のカルボナーラ”を追い求める旅は、まだ始まったばかりかもしれません。

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Vol.9 カルボナーラとたかはしたまご

Vol.9 カルボナーラとたかはしたまご

【夢が1つ叶った日】

取材から1年3ヶ月が経った2017年8月。その時は突然に。高橋さんから1本の電話があり、たかはしたまごの皆さんがご来店される日が決まりました。

遂に高橋さんがカーサベッラに来る!

表現しようのない高揚感で胸が高まりました。

その日は問答無用で貸切にしました。

「いつか高橋さんに僕の作るカルボナーラを食べてもらいたい」・・・その想いがこんなに早く実現するとは思いませんでした。

高橋さんは鶏舎のスタッフの皆さん全員を引き連れて御来店くださいました。鶏舎は365日休みなく稼働しています。私どものレストランに来てくださるために、留守番のパートの方をご手配し、様々な状況をご調整して来てくださりました。

おまかせのフルコース。

カーサベッラはあくまでもレストラン。カルボナーラが美味しいのは当たり前。カルボナーラだけが美味しくてもダメで、その前後のお料理はもちろん、〆のデザートまで気を抜くことはできません。そして何より最初の印象が大切です。

いよいよ御一行がご到着。2台の大きな車でご来店されました。運転される方はノンアルコールなので、塩分量の調整が必要です。

失敗から生まれた「たかはしたまごのスクランブルエッグのサマートリュフ添え」を含む前菜3皿をお出しして、遂にカルボナーラ。

急に緊張して手が震えました。これまでの高橋さんとのやり取り、ここに辿り着くまでの艱難辛苦が走馬灯のように頭を駆け巡りました。

そして遂に高橋さんがカルボナーラを食べた。

頷くことも、何か言葉を発することもありませんでした。しかし、私は不思議と少しも動揺することはありませんでした。

高橋さんが食べるその姿を見ることができ、私はただただひたすら感激していました。

フルコースすべてのお料理を出し終え、高橋さんと話をしました。

「カルボナーラというパスタにうちの卵をこのような形で使ってお客様に出しているなんて、こうして食べてみるまで想像もつかなかったし分からなかったけれど、本当に優しくて食べ飽きない素晴らしい料理だ。卵の風味もしっかり残っていて、とても面白いね。感激したよ」

と目に涙を浮かべながら言葉をかけてくださいました。

その言葉に、私も涙が出そうになりました。

卵に人生を捧げた高橋さん。

その本当の意味で食育を体現した高橋さんの生き様に感銘を受け、共鳴し、この高価な卵がどんなに経営を圧迫しようとも踏ん張り続けて今日まで何とかやってきたこと。無駄ではなかったと思いました。夢が1つ叶ったこの日。少しだけ今日までの苦労が報われた想いでした。

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Vol.8 カルボナーラとたかはしたまご

Vol.8 カルボナーラとたかはしたまご

【カルボナーラへの開眼】

たかはしたまごを使ったカルボナーラを日々作り続けていた2016年の春、とある雑誌に掲載されることになりました。

もちろん取材の目玉となるのは「カルボナーラ」。取材を受けて話をすると実際に、たかはしたまごの高橋さんにも会って話が聞きたいということになり、高橋さんに電話をして取材の可否を聞いてみました。

昔の関係のままであれば断られていたかもしれませんが(笑)この時は是非来てくださいと快諾してくださました。

私自身、たかはしたまごを使ったカルボナーラを毎日作っていましたが、日々頭を悩ませていたので、直接高橋さんに会って色々と話しを聞いてみたいと思っていました。

いざ雑誌のライターさんとたかはしたまごへ。

高橋さんは快く私たちを迎え入れてくださり、少し話をしたらすぐに養鶏場の中へ案内してくれました。ものすごく広い養鶏場にライターさんもびっくり。

天井は高く、風通しも良く太陽の光が差し込む快適な鶏舎。高橋さんがこだわるのは餌だけではありません。美味しい水に、鶏舎が自然災害で倒壊しても方針を全く変えることのなかった高橋さんこだわりの一列鶏舎。

 

 

 

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鶏達の上には天井しかありません。

私自身、他にも鶏舎を見学したことがありますが、少なくとも3段はありました。ひどい所では8段、もしくは二階建てもあるようです。

通常、鶏舎に入れられた鶏達は二度と日の光を見ることもなく、上の段の鶏たちの糞尿にまみれ、最低限の餌を与えられ卵だけを産まされ続けるというストレスの高い環境をあてがわれるわけですが、高橋さんの鶏舎は本当の意味でストレスが無い。

 

そして、何より驚かされるのが全く臭くないのです。その清潔さにも驚きました。暴れている鶏も見当たりません。おそらく、ストレスが無いから鶏達が皆穏やかなのだと思います。

 

高橋さんの徹底ぶりを突き付けられ、改めて尊敬しました。

鶏に時に厳しくこだわる反面、鶏達をまるで自分の家族のように大切にしているのです。

 

取材も終わり、色々ともっと聞こうと考えていたのですが、私は高橋さんが取材中に話していた「家族」や「子供たち」というフレーズが引っ掛かり、山とある質問ができずじまいでした。

 

逆に高橋さんに

 

「お店頑張っているね。まさかこんなに毎回卵を買ってくれるなんて思ってもなかったよ。お店にも行きたいのだけど、この子達(鶏達)を置いていくわけにもいかないからね。でもいつか、食べてみたいなぁ」

 

と言っていただき、

「材料持ってきてこっちで作りましょうか?」

なんて私からも提案したりして。私自身もいつか来てくれたらいいなぁと思う一幕でした。

 

▼養鶏場での写真をフロントに使った雑誌の1ページ

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高橋さんが「家族」「子供たち」という言葉に込めて指しているのは紛れもなく鶏達のこと。この取材を通じて、思い知った計り知れない高橋さんへの鶏達への愛情の深さに大きな感銘を受けた私は、私自身も家族に作るような気持ちでカルボナーラに魂を込めなくてはと心に誓いました。

丁寧に、穏やかに、美味しいものを作らないと。使命感に近いものを感じました。

この取材の機会を経て、卵も生き物だから毎回状態が違うこと、それは子の持つ個性と同じなのではないかと自分なりに結論に至りました。

そしてこれまではレシピを完成させようと分量を測ることに神経質になっていましたが、レシピにこだわるのをやめ、卵の状態、卵の個性に合わせて作っていこうと考えたら、これまで以上にカルボナーラを作るのが楽しく、上手くなりました。

カルボナーラに開眼したタイミングだったかもしれないなと今振り返って改めてそう思います。

Vol.7 カルボナーラとたかはしたまご

Vol.7 カルボナーラとたかはしたまご【萌味たまごと金印たまご】

たかはしたまごには2種類の卵があります。

「萌味(めぐみ)たまご」と「金印たまご」。

高橋さんが低価格や大量生産が主流な現代の風潮を一切無視し、異端児と言われながら「鶏に対して誰よりも優しく、誰よりも厳しく」をモットーに卵の美味しさを追い求めた卵。“人が食べられること”を品質基準に飼料を開発し15年間におよぶ試行錯誤の成果が「金印たまご」です。

そこからさらに踏み込んで、コストの制約を度外視し、素材の品質と種類を共に必要と思われるものを必要なだけ、自然以上に自然の恵みを取り込み作られた高橋さんの思い入れの集大成が「萌味たまご」です。

カルボナーラを作る時には、お一人様分90グラムのスパゲティに対し、卵を2つ使います。卵黄は2個、卵白は1.1~1.3個。

萌味たまご2つで作るカルボナーラの場合、卵の主張が強すぎるので、太いスパゲティを必ず使います。パルミジャーノレッジャーノチーズ、ペコリーノチーズ、いずれも量が少ないと卵の風味でかき消されてしまうので、卵に負けじとチーズの量も必然的に多くなります。グアンチャーレもハーブを強く効かせた物を使います。

結果、かなり濃厚なカルボナーラが出来上がります。慣れていない人であればカルボナーラだけでお腹がいっぱいに!

しかしカーサベッラはあくまでもレストラン。パスタは料理の流れの1つ。カルボナーラだけのパスタ屋をやるつもりは全くないので、あまりに存在感が強い萌味たまごだけでカルボナーラを作るのは断念しました。

試行錯誤した結果、現在は金印たまごを2つ使ってカルボナーラをお出ししています。バランスが良く、完成度が高いです。時々卵の状態を見て、萌味たまごと金印たまごを1つずつ使って作る時もあります。

目標は、フルコースの中で食べても濃厚なのにペロリと食べられる萌味たまご2つで作るカルボナーラを完成させること。

まだまだ日々の研究、試行錯誤は続きます。

▼パッケージもこだわりと情熱が詰まっています

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▼萌味たまご

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▼金印たまご

 

 

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Vol.6 カルボナーラとたかはしたまご

カルボナーラとたかはしたまご Vol.6

【失敗から生まれた人気料理】

カーサベッラがオープンしてからの6ヶ月間、たかはしたまごでカルボナーラ作りを研究していた時に、卵に火を入れすぎて“炒り卵”(スクランブルエッグ)になってしまったことがありました。

カルボナーラが炒り卵になってしまうと大失敗!というイメージが強いのですが、ローマのカンポディフィオーリにあるRistorante Campo di Fiori でカルボナーラを食べた時に、卵が炒り卵になっていました。

すごくびっくりしたのですが、食べてみると、これがびっくりするほど美味しかったのです。カメリエーレに日本人のコックであることを伝え、カルボナーラの炒り卵のことを聞いてみました。

すると、イタリアでは生で卵を食べる習慣がない。だからしゃばしゃばしてるならばちゃんと火を入れた方が衛生的にも良いし、美味しい。生卵はお腹にも良くない。と言っていたことを思い出しました。

確かに炒り卵(スクランブルエッグ)はこれはこれで美味しかったので、アンティパストでお出ししても面白いなと思い、トリュフがあったので一緒に混ぜて食べてみるとまさに絶品でした。卵とトリュフがこんなにも合うなんて!

今となっては、トリュフとたかはしたまごのスクランブルエッグ“Uovo Tartufo”はカーサベッラの人気定番メニューとなっています。

 

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